~悪魔執事とお嬢様~
私はもう一度発表を続けた。
何をいったかは大して重要でないのか、
例の記者は適当にメモを取っていた。
「以上で発表を終わります。何か質問は?」
質問をするようなネタでもないのだろう。
手をあげたのは例の記者だけだ。
「はい。現在のフォスター社ですが、
経営が赤字だらけなのはご存じですよね?
そんな中、こうは言いたくありませんが、
貴女のような素人が、しかも女が、
会社を建て直せるとでも?」
鬱陶しい……。
この記者には一刻も早く帰ってもらうのが
一番賢明な判断だろう。
しかし、なぜここまで噛み付くのか。
周りの記者はそのような素振りを
一切見せない。
いや寧ろ、この記者だけが執拗に
私へ反論してくる。
…………まさか、な。
いや、あり得ないことでもないか……。
「問題は、建て直せるかどうかではなく、
建て直すかどうかです。
仰る通り私は経営面でも、また伯爵という
立場としても素人ですがね。」
「では、
何か建て直せる秘策があるのですね?
教えていただけますか?」
「あろうがなかろうがお伝えできません。」
こいつ、やはり間違いなくライバル社
からの記者だな。
あぁ、これではっきりした。
どんなに毒舌を吐く新聞社だとしても、
流石に会社を建て直す策が
何かだなんて訊くバカはいないだろうし
話すバカもそうはいない。
「そうですか。後もうひとつ__」
「申し訳ございませんが、
お嬢様には予定が詰まっていますので、
そろそろ皆様お引き取りいただけますか?」
シリウスはそういって例の記者を
無理矢理帰した。
他の記者は、一、二質問したところで
帰っていった。
はぁ。
ただでさえクソつまらない記者会見
なのに、この記者のおかげで胸糞悪い
記者会見へ変わってしまった。