~悪魔執事とお嬢様~
…………?
いつから二人は微妙に
仲良くなったんだろうか。
ヴィル爺のMr.シリウスは普通でも、
シリウスのヴィルさん呼びは…
違和感が半端じゃない。
「というかもう誰が教えようと構わないので
早く終わらせてください。
レッスンが終わったらシリウスの服も
何着か注文しなくてはいけませんし。」
「かしこまりました。では歌とダンスと
楽器の練習は大広間で致しましょう。
楽器についてご所望は?」
「特に。」
そういえば我が家は無駄に楽器が
多かったな。
舞踏会に演奏者を呼ぶためだとか理由は
様々だが。
「では、
ヴァイオリンとハープにしましょう。」
あぁ、面倒くさい。本当に。
*****
「まず、お嬢様の楽器の腕前を
知りたいのですが。」
「そこらの貴族よりは上手い方じゃあ
ないんですか?
最も、
そんな腕前は必要とされませんけど。」
19世紀イギリス、我々レディーの娯楽は、
絵画や楽器や歌などだったが、
プロ並みまで上達してはいけないと
言うマナーだった。
会社を経営している私やお父様は
特殊だが、この時代、貴族と言うものは
その爵位を取得しているだけで仕事に
就いているようなもの。
だから、趣味や娯楽が金を稼げるレベル
まで到達すると、副業ができる
状態になってしまう。
そしてプロ並みとは言えずとも、
そこらの貴族よりは演奏が得意な私は
ほぼマナー違反だ。
「始めに、
悪魔のトリルを弾いていただきます。
かなり楽譜が使い古されていますから、
お嬢様も何度か演奏したご経験が
おありでしょう?」
「無いことはないですが、
流石に難易度が高すぎる気が……」