咲き誇るものは忍の恋なり
「おはよう、紫音先輩!」

「おはようございます、結合さん。」

タメ口で軽く話す結合と、相変わらず丁寧な口調の紫音。...もう、どちらが先輩かわからない状態である。

「!......日下部さん!先輩には...!」

「いいんです、周先輩。私がいいと言ったので。」

敬語を使わない結合に違反通告をしようとした周委員長を毎度のように紫音がなだめる。
紫音が編入して早2週間。紫音も大分この菱川中に慣れてきたようである。結合らと紫音とでは1年の年齢の差があるものの、古くからの友人のように打ち解けていた。

「やっぱり、紫音先輩は丁寧語やめないの?」

美結の問い。これも毎日のように話題となる。

「......えぇ。もう、小さい頃からのクセみたいなものです。気にしないで下さいね。」

紫音の返事も毎度の如く“クセ”だ。

「あ、1年の教室だ。じゃーねー!紫音先輩!」

「また昼休み!」

「はい。」

「すみません、先輩。うるさくて。」

「大丈夫ですよ。賑やかなのは良いことですし。では、また昼休みに。」

「「うんっ!」」

結合らは自身の教室に、紫音は階段を上り、2年の教室へと向かっていった。

「昼休み、楽しみだね、結合っ!」

「ねーっ!」

「お前ら先輩困らせるなよ......?」

「「はーいっ!」」

呆れながら女子2人に注意する海の姿は、さながら母のようである。そんな中、

「最近美結を先輩に取られてる気がする......。」

隅で“ずーん.........”と効果音が付きそうな程の暗いオーラで真が落ち込んでいた。


「昼休み、ですかぁ......。楽しみですね、本当に...」

階段を歩きながら、紫音がそう呟いて妖しく笑ったことを知る者は、誰一人としていなかった。
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