窓の外は晴れ
私は恐る恐る富田の前のソファーに腰をかけた
良く見るとこの部屋にはキッチンまでついていた。
富田はここに住んでるのかな…
美「あの…
ここに住んでるんですか?」
富「ん?ここはたまに帰ってくるホテルだよ。
部屋がいろんな所にある…
その日の気分で何処に帰るかとか決めてな」
思わず、もったいない。と言いそうになったのをぐっと堪えた
この人は一体どれくらい稼いでどれくらい偉い人なのだろう
この大都会、東京にはこんな暮らしをする人達が五万と居るのだろうか。
それとも、ほんの一握りの成功者だろうか。
富「美織は、好きな人とか居るのか?」
美「え?…えーと…」
富「見たよ、ニュース。
見たくなくても嫌って程、報道してたもんな。
円衣裕太の事がまだ好きか?」
美「………」
富「さっきも言っただろう。
…俺を好きになる必要もないし、好きなフリをする必要もない。ただ、興味があるだけだ」
美「…まだ、好きです」
富「…そうか。
そこまで好きになれる人が居るって羨ましいな…」
富田は立ち上がると冷蔵庫から黒いドンペリニョンを取り出し、私にグラスを渡すと注いでくれた
私も富田につごうとすると「いいよ」と自分でつぎ、グラスを持って一面ガラスの壁の方に行くと夜景を見始めた。
私はソファーから
富田の背中に向かって訊いてみた
美「…富田さんは好きな人とか居ないんですか?」
富「…信用できないんだ。誰の事も…好きな人を疑うくらいなら、好きにならない方が楽なんだよ」
振り向いた富田の笑顔は、なんだか悲しそうにガラスに照らされていた