窓の外は晴れ




美「…相手の事、信用出来ないならそれまでの関係だった。って思います…」




言った後で後悔した

じゃあ、円衣裕太が私の事を信じなかったのは?

私たちがそれだけの関係だったという事?

違う…そんな一瞬の行為で私達の全てを決められるだなんて




美「すみません…今の撤回します
でも私には、好きな人を疑う気持ちがわからない…どうして好きなのに?」




まるで円衣裕太に問うように、私は富田に訊いた
富田はドンペリニョンを一気に流し込むと言った




富「美織は、金持ちの臆病者と貧乏だけど愛を沢山持ってる奴。どっちが幸せだと思う?」



美「……え?」



富「まぁ…答えなんて、賛否両論だろうが…」



美「どうしてそんな事、訊くんですか?」



富「俺が、金持ちの臆病者だから」




富田はソファーに戻りグラスを置くと葉巻に火をつけた




美「富田さんは臆病者なんですか?」



富「…臆病者だよ?金のせいで…稼ぎすぎた金のせいで来る女来る女…金目当てだと思ってしまう
俺な…田舎もんなんだよ。一発逆転して大成功したんだ。実家も凄い貧乏だったしな。

でももし、もう一度人生やり直せるとしたら…俺は普通の、平凡な暮らしを選ぶと思う」





これだけの財産を捨ててでも、富田の欲しがるモノって、そんなに良いものなのかな…




美「お金目当てじゃなくて富田さんの事、幸せにしてくれる人、居ると思いますよ」



富「その唯一の女でさえ、俺は怖くて突き放してしまった。金なんか要らないって言っておきながら矛盾してるかな。
いや、ただ本気で愛されたいだけなんだけどな」






富田は自傷的に笑うとシャワールームへと消えていった

富田は何故そんな話を、今日初めて会った私に話したのだろう


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