窓の外は晴れ
一人になった広すぎる部屋…
キッチンに行くと富田の言った通り名刺が1枚、ぽつんと置かれていた
名刺には電話番号が書かれていた
私はその名刺を鞄に仕舞い、窓の外を見る。まだ朝日も差し込んでいない朝だった
曇った世界に、東京は何も輝いていなかった。
昨日のあの夜景は幻?
汚れた空に、執拗に建てられたビルが無表情で突っ立っている
ビルが無表情なのは当たり前か…
時計を見るとまだ早朝の5時過ぎだった
私は佐々木に電話をかけた
佐『……ん…はい、もしもし?』
美「…私だけど。」
佐『おう美織か、どうしたこんなに朝早くから…』
美「…今日の仕事、何時から?」
さ『おーやる気になってくれたか
じゃあまず雑誌の取材にしよう。鬱病を告白して読者の涙を誘うんだ、週刊誌に追い詰められたせいでってな!』
美「…なんでもいいよ、もう…」
佐『ところで美織、まだ富田社長のところか?』
そこで私は黙って電話を切った
美「まだ富田社長のところか?………だって。」
いつ、私が富田社長の所に居るって言ったっけ?
富田社長も、携帯を一度もいじってなかったけど…
初めから枕させる為に、富田に会わせたんだね…
ツーツーと機械音の鳴る携帯を持つ腕は力無くぶら下がった。
その場に佇みながら私は何時間も何時間も、灰色の東京を見下ろしていた
ポタリ、ポタリと溢れる涙はまるで私の心から流れる血のようだった。