窓の外は晴れ
その日の夜、仕事を終えると事務所に富田の車が迎えに来た
富田のボディガードの人が1人運転手とは別にいつも乗っている
私なんてそんなに大物じゃないからボディガードなんていらないのに。といつも思うけど、ボディガードの人が怖くて言えないし、いつも目はなるべく合わせないようにしている
ホテルに着くと従業員とオーナーが出てきて深く頭を下げて挨拶をしてくる
私は慣れたようにその前を通ると65階へと向かう
カードキーを使って中に入る
富田はソファーに腰をかけながら赤ワインを飲んでいた
美「お待たせしました」
富「おう、お疲れ。」
富田の前に座ると、富田は私の分のグラスを出して赤ワインを注いでくれた
美「ありがとう…美味しい…」
富「ボジョレーヌーボーだ。
今年のは良い出来だと聞いたが…確かにうまいな」
もうそんな季節か……
通りで最近、寒さが目立つ。今年も残りわずかなんだ
富「ボジョレーヌーボーを飲むと1年を振り返ってしまう。毎年、飲むからそんな癖が付いてしまった」
富田はチーズを口に放りこんだ
美「今年はどんな一年でした?」
富「そうだな…
今年の仕事はだいぶうまくいった
大手ともコンタクトを取れたし外国の社長とも知り合いになれる機会があった。なかなか実のある一年になったよ…美織にも会えたしな」
私は微笑んだ。
富「美織はどんな1年だった?」
どんな1年だったか…
仕事も無く、フラフラ女優かぶれだった。それを変えたのは、円衣裕太との出会いだった
円衣裕太に恋をした
その恋が実った
仕事を頑張った
円衣裕太の笑顔に癒された
プロポーズの予告をされた
一緒に住もうって言われた
悲しい顔をさせた。怒らせた
円衣裕太が離れていった。
……どの日々を思い出しても、円衣裕太でいっぱいだった。
美「………素敵な、一生忘れる事の無い1年だったと思います」
富「…そうか。」
富田はにっこり微笑むと深く訊いてくる事は無かった。