窓の外は晴れ





凍り付いた空気を破ったのは、本田さんだった





本「…つまりウチの円衣裕太を利用したと、傷物にしたという事ですか?」



佐「傷物だなんて…
それはお互い様のつもりです。
売名行為は諸刃の剣…美織だってタダでは済まない事は承知の上ですよ。
まぁただ、利用したって言うのは…その通りですね」




やめて…もうやめてよ………





本「…こんなにも長い時間を掛けて裕太を騙したっていうのか?」



佐「…まさか、円衣裕太さんは美織の事を本気で好きに?さっきから怖い顔して…」




裕太…違う、騙してなんかない
叫びたいのに…うまく声が…

黙り込む円衣裕太に、佐々木は更に言い被せた




佐「あなたくらいの俳優が…まさか美織に本気になるとは思えない。
一体何人…他に彼女がいるんですか?」



裕「…あなたとは話をしたくない
俺は美織から訊きたい。
今までのが嘘だったのかを…」




黙り込んでいた円衣裕太は私をまっすぐ見つめながら小さな低い声で言った




佐「確認しないと不安なんですね
所詮それくらいの恋だったんですよ…子供の恋だ
…まだまだ人生は長い、また巡り会える」



裕「…うるせぇんだよ黙ってろよ
美織に訊いてんだよ!
美織、答えろ。
俺を利用してたのか?違うだろ?
…俺にはどうしても美織の笑顔が…あの時間が…嘘だっただなんて思えない」





円衣裕太は目に涙を溜めながら怒鳴った
こんなに怒りを顕にしている円衣裕太を初めて見て、私は怖気付いてしまった


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