迷走女に激辛プロポーズ
「私、十月に佑都様とお見合いする予定だった相手の一人です」

――が、違った。ホッと息を吐く。ん? なぜホッとするのだ、と思っている間に、白百合のような人の話が始まった。

彼女の話によると、花嫁候補は十人。それぞれ申し分無い家柄と人柄だそうだ。

ああ、例の話だなと思い出し、申し分ないご令嬢を十人も集められる一族一同様のネットワークの広さに感嘆する。

「佑都様が何も行動を起こされなかったら、私たちは順にお見合いし、その中から花嫁が選ばれる予定だったのです。それは私だったかもしれません」

外見と違って、ずいぶん強気で自信家のお嬢様だ、と耳を傾けながらボンヤリ思う。

「だから、お願いです。佑都様とは別れて下さい」

こんな修羅場をドラマで何回も見た。しかし、リアルにその当事者なるとは……想像もしていなかった。

白百合のような人の言葉を他人事のように聞きながら、失礼だと思いながらもクスッと笑ってしまう。

本当、笑える。飯友を卒業し、佑都と恋人という名の付き合いを始めてから有り得ないことばかり起こる。でも、それが意外に嫌じゃない。

ニコリと笑い言う。

「お門違いもいいところね」
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