迷走女に激辛プロポーズ
兄と佑都は年齢こそ違うが、宇宙人という共通点故の繋がりからか? 随分前からの知り合いらしい。それもかなり親しい間柄のようだ。

それならそうと言ってくれれば、昨日あれほど悩まずに済んだものを!
ここで二人を睨めないので、田楽を睨んでおく。

どうやら父も母も佑都を知っていたようだ。兄繋がりでだろうか? そこは疑問が残るところだが……何だ、この和気藹々とした雰囲気?

腑に落ちぬ! と母ご自慢のローストビーフに手を伸ばす。

ダイニングテーブルを囲む、笑顔・笑顔・笑顔・笑顔、ズットこうだ。
そして、今、話題はなぜかワニ。

結婚宣言の話はどうやら蚊帳の外に飛んで行ったらしい。
じゃあ、なぜここへ呼んだのだ?

「あらぁ、楓ちゃん、あまりお箸が進まないようだけど、もしかして悪阻?」

突然の襲撃。予期せぬ母の言葉。油断していた私は瞬間移動したかのように、一瞬で現実世界に舞い戻る。

そして、ハァと目を剥き、口に入れたばかりのローストビーフを喉に詰まらせ、ゴホゴホ咳き込む。

なっ、何を宣う我が母よ! バージンを捕まえ、悪阻? 私はマリア様か!
それに、見ていなかったのか! 私はズット食べ続けていたぞ!
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