迷走女に激辛プロポーズ
佑都がクスクス笑いながら、ポンポンと私の背中を叩く。

「お義母さん、申訳ございません。まだ、ご期待に添いかねます」
「なんだ、つまらない。私、早く孫と遊びたいのに、パパもそうでしょう?」

唇を突き出し拗ねる母を、父はヨシヨシとなだめる。
何歳になっても仲の良い夫婦だ。

「佑都、お前、まだコイツのこと落とし切れていないのか」

兄の言葉に佑都は苦笑いを浮かべ頷く。

兄は典型的な日本人顔の醤油系。端正な顔は昔から変わらず、ズット美人の母似だと思っていたが、三十路を超えてからワイルドさが加わり、どことなく父に似てきたように思う。

その顔が不満気に歪む。佑都の答えが気に食わなかったのだろう。
なのに、なぜか矛先は私。日本狼のようなその眼付きが……怖い!

「楓、お前、佑都のことをどう思っているんだ?」

突然投下される爆弾。やはり、兄は兄だった。
ここで無言は通じない。より容赦無い追撃があるからだ。一言でも返さねば!

「……分からない」
「ほほう、分からないとは漠然とした答えだな。一緒に住んでいるのに」
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