迷走女に激辛プロポーズ
だが、期待空しく涙目で首を横に振る母。

「ごめんね、楓ちゃん。ママ、修一君には逆らえないの」

そして、クスンと鼻を鳴らす。

そうだ、そうだった。母にとって、父は王様で、兄は王子様だ。王子様の命令は絶対だ。助けを求めた私が馬鹿だった。

続けて父も言う。

「修一の言う通りだ。結婚前提と聞いていたから同居を黙認したが、本人の気持ちがあやふやなら解消するしかあるまい」

結婚前提と聞いていた……?
当然、発信源は遥香。あの娘、ただではおかぬ!

思考が他所に飛んでいるところで、兄の声が現状に引き戻す。

「というわけだ。楓、分かったろ」

兄の顔に不敵な笑みが浮かぶ……逆らえない。
力無く肩を落とすと、そこに勇者現る!

「待って下さい」

兄の笑みに果敢にも挑もうとする命知らずの輩を見る。

ご両親と先輩が心配されるのは、ごもっともです」

勇者は当然、佑都。彼は約束通り私を守ってくれるようだ。

彼を見ながら、こういうシーン、何度も物語で読んだなぁ。姫の危機を知り颯爽と現れる王子。素敵だったなぁと思い出す。そして、彼がその王子と被る。
< 135 / 249 >

この作品をシェア

pagetop