迷走女に激辛プロポーズ
その兄が婚約者の女性関係を知ったのは、彼が亡くなった時……続々と弔問に訪れる愛人たちを見た時だ。

死者に対する冒涜かもしれないが、『自分の目は曇っていた。こんな奴に大切な妹をやらずに済んで良かった』と死者を前に兄はマグマを大爆発させた。

そして、その後、反省の念と自戒の念でアラスカに旅立った兄は、かなり長い間、日本に戻らず、私と顔を合わせなかった。

当時は兄の安否を凄く心配した。だが、そのまま戻らずにいてくれたらどんなに良かったか……と思わずにいられない今日この頃。

なぜなら、反省と自戒が間違った方向に行ってしまったからだ。

以前よりも更にエスカレートさせた過保護振りは、うんざりというよりも恐怖だ。

姿は現さなかったが、二年前の母プレゼンツお見合い大作戦も、どうやら兄が加担していたらしい。

兄は私の幸せを何よりも第一に考えている。だから、付き合っていた女性がいたらしいが未だ独身だ。

そんな兄の姿が私を苦しめる。
懺悔すべき本当の罪人は……私だからだ。
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