迷走女に激辛プロポーズ
午後五時、終業時間と共に清香が席を立つ。その五分後、遥香が姿を現す。
行きたくないオーラ満載の私を二人は拉致り、タクシー……ではなく、リンカーン リムジンに連れ込む。
余計なお世話だが、常々私は思っている。ストレッチリムジンのように改造して車体を長く延長した車は、日本の公道を走るのに無理があるのでは……と。
イヤ! これは持たぬ者のひがみでは無い……決して……無い……。
それにしても……と車内を見回す。
誰の車だろう、と思っていると「遥香お嬢様、発車いたします」とスピーカー越しに運転手の声が聞こえ、ああ、と察知する。
娘よ、お主はやはり、お嬢であったか。
しかし、そのらしからぬ言動。恋愛相談よりも、まず、そちらを悔い改めた方が婿ゲットの早道ではなかろうか……とちゃぶ台の私とヒソヒソ話をする。
私の心配など露ほども知らぬ遥香が「よろしく」と告げると、車が静かに動き始めた。
行き先を告げずとも、運転手はどこへ行くのか知っているようだ。ある意味、ナビちゃんより賢い。