迷走女に激辛プロポーズ
「帝ッチ、本気なのですか? 止めましょう、不幸になります!」

それだけ言うと、コテンとまた眠ってしまった。

百合子のこのあらがう態度。彼女の恨みは相当根深いようだ。
だからと言って……散々の言われようだ。だんだん矢崎課長が気の毒になってきた。

それにしても……と、突然、遥香の結婚条件を思い出す。
遥香は矢崎課長を『キスできる人』と認めたのだろうか?

認めたから告白するのだろう……が、ウーンと考えながら、頼んだばかりのカンパリオレンジをストローでチューッと飲み、海の幸のカクテルに手を伸ばす。

噛むほどに甘みが増す生ホタテに舌鼓を打ち、コクッと飲み込み、訊ねてみる。

「遥香は矢崎課長とキスできるの?」

ハァ? 清香と遥香が私を注目する。

「子猫ちゃんまで、酔っ払い?」

酔っているとは思うが、百合子ほどではない……と思う。

「いえ、ちょっと思い出したもので」

遥香は、あぁ、と私が何を訊ねたのか分かったようで、コクリと頷く。

「ハイ、矢崎課長とキスできます。いえ、すぐにでもしたいです!」

今度は遥香の顔に、私と清香の視線が集まる。

「私、矢崎課長が好きです。たぶん、初めての本気だと思います」

やっぱり遥香は理解不能な、あっち系の宇宙人だ。
付き合ってもいない人を、彼女は好きだと言い切る……なぜそう言えるのだ……分からない。

私は佑都と五年も飯友として付き合ってきた。なのに、彼を好きどころか、どう思っているのか分からないのに……遥香と私……何が違うのだろう……?
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