迷走女に激辛プロポーズ
「えぇぇ、どうしてですか、好きって言えばいいじゃないですか」
「だからですねぇ、好きを感じる? 瞬間がないんです」
「それって、恋愛感情の『好き』ですよね? 一緒に住んでいて……ですか?」

信じられない、というように遥香は目を丸くする。

「一緒に住んでいても、ただの同居ですから。私、下宿人ですから」
「あの、ちょっとお訊ねしますが、寝起き別々ですか?」

遥香の問いに間髪入れず答える。

「当たり前じゃないですか、私は超デラックスなゲストルームで寝起きしております!」

いいでしょうと自慢気に言うと、遥香はゲンナリ肩を落とす。そして、力強くキッパリ言う。

「有り得ません! 結婚宣言しておいて、大人な男女が一か月以上も一緒に住んでいて。幼稚園児のお泊り会でもあるまいし、バッカじゃないですか! まったく白鳥課長も何やってんだかです。本当に、有り得ません!」

有り得ないのか? バカなのか? バッサリ切り捨て御免され、その後、その傷に塩を塗られた気分だ。シクシクと体のあちこちに痛みが沁みる。
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