迷走女に激辛プロポーズ
佑都が私の顔を見るや否や、息を飲む。
ん? 何か付いているのかなぁ、と自分の顔をペタペタ触る。

「フフッ、今夜は我慢大会かしら?」
「ですねっ。酔っ払いには手を出せないでしょう」

清香と遥香は、大名と越後屋のような悪い笑みを浮かべ、意味深に目配せし合う。その横で、グッスリ寝込んでいた百合子が「恭吾お兄様はダメです!」と突然叫び、彼女の振り上げた手が、越後屋遥香にパンチを食らわす。

遥香は驚き、大名清香のスカートにチチをブッかける。清香はキャッと飛び上がり、ソルティドッグを持ったウエイターに頭突きをかまし、それでもウエイターはソルティドッグを守護すると、何食わぬ顔で「お待たせいたしました」とテーブルに置く。

お見事! 私はウエイターにパチパチと称賛の拍手を送る。
アハハ、面白い。女子会最高! 佑都の腕の中でケラケラ笑い続ける。

見上げると、彼は呆れながらも優しい眼差しで私を見つめている。他の誰でもない……私を……それが嬉しい……彼を独り占めしているようで……。



佑都は私を腕に抱え、エレベーターを降りる。

「あれぇ……ここまだ二十二階だよ」
「こんなことだろうと思って、部屋を取っておいた」
「フーン」

着いた先は、通常の何倍もある広い部屋。ベッドルームとリビングルームが一つになっているから、セミ・スイート(ジュニア・スイート)と呼ばれる部屋だろう。
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