迷走女に激辛プロポーズ
通常の私なら、寝るだけの部屋に、こんな贅沢な部屋は勿体ない! と文句を言っただろうが、今の私は気分がいい。

だから、部屋に合わせて姫になる。
だから、王子に見つめたら、当然のように見つめ返す。

五割り増しイケメン度がアップした佑都は実に眩しい。クラクラ目眩がする。

「お前がそんな顔をしているからいけないんだ……我慢していたのに……」

王子は切な気な声と共に、姫を抱き締めると、幾日か振りのキスをする。

「お前の甘い息で素面の俺まで酔いそうだ」

唇が離れると、彼の顔を間近に見つめ訊ねる。

「ギュッもキスも……我慢していたの?」
「そう、土曜にお前の返事を聞くまで、しないと決めていた……なのに……」

再び落とされたキスに、嗚呼、そうだったのか、だから最近ベタベタしなかったのか、と何となく安堵する。でも、珍しいこともあるものだ。佑都が決めたことを破るなんて……。

「その顔はどうしたのだ?」

囁くような佑都の声に目を開ける。

顔? さっきから何か気にしているみたいだが、どうやら顔がおかしいらしい。
回らない頭を動かし、ウーンと考え、ハタと思い付く。

「ここに来る前、車の中で竜崎課長と遥香にお化粧されたの、それかな?」

私の言葉に佑都が舌打ちする。この瞬間、王子も姫も消える。

「あいつら、こんな顔でこんな所に連れてきやがって!」
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