迷走女に激辛プロポーズ
彼は黙ったまま私を抱え上げ、洗面台の上に座らせる。

「何をするの?」

佑都は私の髪を撫で付けると、アメニティグッズの中から、ターバンを取り出し、髪が顔にかからないように付ける。

ここのアメニティグッズは半端無いなぁと見ていると、佑都がポイントメイクリムーバー取り出す。

こんなものまで、と驚いていると、彼はそれをコットンに滲み込ませ口紅を落とす。

「何でやり方を知ってるの? 手慣れてるね」
「あぁ、モデルをしていた時、メイクさんから教えてもらった」
「フーン、私はまた、彼女から教えてもらったのかと思った」
「何だ、焼きもちか?」

ニヤリと笑い、スッピンの唇にキスをする。
目を瞑った私に佑都が唇の上で囁く。

「そのまま瞑っていろ」

そのすぐ後、両瞼に冷たさを感じ、数秒後、瞼に置いたコットンで、佑都は丁寧にアイメイクを落とす。

「俺も男だ、過去、付き合った女はそこそこいた」

佑都から、最愛の人以外の女性の話を聞くのは初めてだった。だからか、チクンと胸に針が刺さる。

「だが、こんなことをしてやるのは、後にも先にもお前だけだ」

最愛の人にはできなかったんだ、と佑都を思い、またチクンと針が刺さる。

「クレンジングは、クリーム、ジェル、オイルがあるけど、どれがいい?」

だが、酔っぱらいの思考能力は低い。
針千本の呪いで胸を痛めていたにもかかわらず、その言葉でたちまちテンションが上がる。
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