迷走女に激辛プロポーズ
流石、KOGOのジュニア・スイート、すべて持ち帰り土産にするぞと一人ほくそ笑む。

「じゃあ、ジェルで」

佑都はクレンジングジェルを指に取り、両頬と額鼻顎に乗せ、優しく指を滑らしメイクを落としていく。

「楓」
「ん?」
「お前の肌はキメ細かく白くて……綺麗だ。だから……もうあんな化粧はするな」

あんな……とは、どんなだったのだろ? 見損ねてしまった。

「それに、スゴク触り心地が良い。俺以外の奴に触らせるな。女でもだ!」

その要求は呑めないなぁ。強引にだが、清香の頼んだブライダルエステに行かなきゃいけないし、月一回行っている顔面マッサージにも行きたい。だから強く「NO!」と答える。

だが声になっていなかったようだ。返事をしない私に佑都が「オイ」と声を掛ける。

「眠くなってきたのか?」
「うーん、あっ……うん……」

佑都の手はやっぱり魔法の手だ。有名マジシャンじゃないが、ハンド・パワーっていうのかな……本当に癒される。

彼の指の動きが気持ち良く、私はしばし微睡む。
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