迷走女に激辛プロポーズ
「終わったぞ」

温かなタオルで顔を拭われると、顔面が一皮剥けたようにスッキリとする。
同時に眠気も少し遠のく。
佑都はツベツベになった頬に両手を添え、マジマジと見つめ、満足そうに微笑む。

「いつもの楓だ。お帰り」
「――あ、ん? ただいま」

額にキスし訊ねる。

「シャワーどうする? 酔っ払いを一人で浴びさせたくないが、かと言って一緒に入るとお前は怒るだろうし、でも気持ち悪いだろ」

ヘッ! 貴方様と一緒に入るなど、滅相もございません!
でも、佑都の言う通り、このまま寝るのは嫌だ。

「あっ、うん、チャッと浴びて、チャッと上がる」
「じゃあ、五分経って出てこなかったら入るからな。髪は明日洗え」

ターバンの上からシャワーキャップを被せ、本気とも冗談とも思えぬ恐い台詞を残し、佑都はバスルームから出て行く。

なので私は、「ハイ、了解しました、隊長!」と敬礼をし、速攻で服を脱ぎ棄て、バスルームに飛び込み、自己最短記録、四分で上がった。

これが烏の行水なのね、と実感した入浴だった。
< 166 / 249 >

この作品をシェア

pagetop