迷走女に激辛プロポーズ
それでもシャワーを浴び、幾分酔いも覚めた。

心地良さを感じながらバスルームを出ると、部屋は照明が落とされ、ベッドサイドの明かりだけが煌々と灯っていた。

佑都はその中にいた。枕をクッション代わりにし、片膝を立て、ヘッドボードに背を預けていた。まるでドラマの一場面を見ているようだ。

彼の視線の先にはノートパソコン。仕事をしているようだ。うつむいた顔に前髪がかかり影を作っている。その顔を見た途端、ドグンと心臓が音を立てる。

しみじみ思う。本当にあの男は美しい。男性が美しい女性を見て、生唾をゴクンと飲むと言うが……その気持ちが今なら分かる。

私は生唾をゴックンし、佑都に声を掛ける。

「――仕事?」
「ん、上がったのか。あぁ。枕元に水がある。飲んだらもう寝ろ。俺も浴びてくる」

佑都は顎でサイドボードのウォーターピッチャーを指し、それからポンポンと自分の隣を叩いた。

そっか、今日は別々の部屋じゃないんだ。
少々、言葉に語弊はあるが、ベッドを共にするのは初めてじゃない。だが、何故か少し気恥ずかしい。

水を飲み、コソコソと布団に潜り込むと佑都に背中を向ける。佑都が髪を撫で、「おやすみ」とキスを頬に一つ落とす。私も「おやすみ」と返す。

彼がベッドを抜け出し、バスルームへ向かう気配を感じ、ようやくホッと息を吐く。
< 167 / 249 >

この作品をシェア

pagetop