迷走女に激辛プロポーズ
体はドロドロに疲れているのに……眠ろうと目を瞑ると、フラッシュバックのように清香たちとの会話を思い出し眠れない。

厚い緞帳……理由……罪。

清香の言う通りだ。私は自分の人生に重く厚い幕を下ろした。だから、生涯独身でいようと決めた。

幕が下りた舞台に残したもの。それは鍵の掛かった懺悔という心。

我が身、可愛さに祈った。
婚約者との何も無い関係が無理なら、彼がこの世からいなくなればいい……と。

そして、彼は、本当にいなくなった……実に呆気なく。祈り殺されたかのように……この世から。

だから、兄が私に対して、自責の念に駆られる必要は何もない。
本当に罰せられるべきは、私だからだ。

だが、ズルイ私は真実を打ち明けられない。
これが緞帳を下す理由。

「楓……何を泣いているのだ」

泣いている? 私が?

お風呂上がりの佑都の身体が私の身体に寄り添う。温かい。
そして、美しい指が涙を拭う。優しい。

「初めてだな……俺の前で泣くの」

どことなく嬉しそうな彼の声。彼は私を胸に抱き、髪を優しく撫でる。
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