迷走女に激辛プロポーズ
甘えを抑えていたのに……誰にも頼らず一人でいいと思っていたのに……でも、もうダメだ。

佑都の優しさが、私を甘やかし、頼れ、一人でいるな、と言う。

「佑都、私、やっぱり佑都と結婚できない! 私……スゴイ嫌な奴で、卑怯でズルくて、邪悪で……他にもいっぱいある!」

堰き止めていた濁流が一気に流れ出したかのように、子供のように泣き喚く。
佑都はウンウンと相槌を打ちながら私を抱き締める。

「そんなの知っていたさ、でも、楓がいいんだ。楓と結婚したい」

「ヒドイ! 否定してよ! ううん、しなくていい! 私はもっとヒドイ奴だ。私……婚約者を……祈り殺した。そんな邪悪な奴……一生一人寂しく生きていけばいいんだ……」

鍵を掛け、封印していた心が堪り兼ねたように飛び出す。

しゃっくりを上げ大泣きする私に、佑都は突然「ちょっと待て!」と言い、私を腕に抱いたままガバッと起き上がる。

「お前、今、何を言った?」
「一生一人で……」

佑都が違うと首を振る。

「邪悪な奴……」

「イヤ、その前」
「ん? 婚約者? 祈り殺した……?」

「婚約者を祈り殺したって、お前、婚約者のこと愛していたから、忘れられなかったんじゃなかったのか?」

「――違うよ」

佑都は私の言葉を聞き、今世紀最大とも思える溜息を吐く。
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