迷走女に激辛プロポーズ
「――無きにしも非ず? 両親と兄のことはその通りだと思う。でも、友達は昔からいなかったから必要性を感じなかった。それに……佑都がいてくれたから……」

そこでハッとする。これでは婚約者と同じではないか! 一人ぼっちの孤独から救ってくれる人なら、誰でもいいということではないのか……?

ますます分からなくなった。佑都のことを私はどう思っているのだろう……。

「俺はお前が婚約者のことを、愛するが故に忘れられず心を閉ざし生きているのだと思っていた」

佑都が安堵の息を吐く。

「だが、それが勘違いだと分かってホッとした。生者と死者との戦いには限界がある。勝てない。奴らは愛する者の心まで持って行くからな」

そして、優しく頬を撫でる。

「心を取り戻すには、持っていかれた本人が、自分で取り戻すしかない。まぁ、ある意味、婚約者はお前の心を持って行ったようなものだが……」

「持っていかれてない! 私は私の心を自分で閉じ込め鍵を掛けたの! 間違えないで!」

何故、そこで訂正を力説するんだ、と佑都は可笑しそうに笑う。

私は何となくだが、婚約者に心を持っていかれたと思って欲しくなかった。
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