迷走女に激辛プロポーズ
「なるほど、そうかそうか、自分でねぇ……」

佑都が憎らしそうに私の頬を抓る。

「そんなことをするから、この五年、お前を見守る周りの人たちが、どんなにハラハラし、どんなに心配したか……オラオラ、分かっているのか?」

佑都の抓る頬が両頬になる。

「いらい! いらいから、やめれくらはい……」

「俺だって、心を持っていかれてる奴に、好きだとも、愛してるだとも言えず、どんなに悶々としたか! それを自分でだと! 嗚呼、また腹が立ってきた」

手加減していると思うが、やっぱり痛い。痛いから、現実なんだと思う。

佑都が私を好き? 愛している?

「ちょっろ、まっれくらはい……いま、なんれいいまひら……」

佑都はフンと鼻を鳴らし、手を放す。その隙に、彼の腿から飛び降りると、彼の脇で頬を撫でながら正座をする。

「何を言っているのか分からない。ちゃんとしゃべれ」

お主が抓っていたからだ、と反論せず、もう一度訊ねる。

「――私のことが……好き? 愛している? そういう風なこと言った?」

だって、コヤツの心には最愛の人がいるのに……?

「言った。好きになったのは、お前が高校生の時。愛していると悟ったのは、お前とエレベーターで会話した時」

ハァァァ、何を言っているのだ?
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