迷走女に激辛プロポーズ
全くもって記憶になく、いまいち自責の念はないものの……ごめんなさい、と心の中で謝っておく。

そんな不埒な私に、不機嫌ながらも完璧ビジネススタイルの佑都が近付く。
今日も朝から無駄に美しい。

「宣言した通り本気で口説く。覚悟しておけ」

佑都はニヤッと笑うと、私を抱き寄せ、打って変わったような甘い声で囁く。

「楓、おはよう。今日も綺麗だ」

フワッとグリンノートが香り、佑都は朝から甘々なキスをする。

やっぱり私はキス魔だ。彼との関係をあやふやにしているのに、キスは拒絶できない。佑都とのキスが好きだ。

「昨日、俺が言った言葉、覚えているな」

離れた唇が問う。

「俺がいないとどう思う? だったよね」

たとえ私がおバカでも、朝から五回も聞かされれば忘れようがない。

「ああ、しっかり考えろ。返事は明日だ」
「――うん」

「もうすぐ爺様が来る。モーニングを一緒に取ろうだと」

佑都は何度目かのキスの後、唇を離すと突然そう言った。

「お前がシャワーを浴びている時、連絡があった」

そう言えば、イーサンはこのホテルに宿泊していたんだ、と思い出す。
その途端、チャイムが鳴る。
< 175 / 249 >

この作品をシェア

pagetop