迷走女に激辛プロポーズ
「そう、それぐらい積極的に行動しないと、今の世の中、欲しいものは手に入らないわ。まぁ、クルエラの場合、やり過ぎ感は否めないけど……悪役から学ぶべきことは多いわね。一種の反面教師ってところかしら」

清香が意味深に微笑む。

「ドラマでも小説でも悪役がいるから、主人公が引き立つ。そして話の展開が盛り上がり面白くなる。更に、主人公と対比させることで、学ぶべきことが明快になる。それはリアルな人生においても……ねっ」

リアルな人生……悪役……クルエラ……挿絵……清香……清香は悪役……?

もしかしたら……共演者の立場で悪役を勝って出ている?
今までのことは……ワザとやっている?

彼女の意図は掴めないけれど、少しずつ彼女の行動が見えてきた。
彼女はいつも私のために何かを仕掛けてくる、悪い方にじゃないことは確かだ。

清香はケーキを食べ終え、コーヒーを飲み終わると立ち上がった。

「じゃあ、お先に。子猫ちゃん、再演、楽しみにしているわ」

ヒラヒラと手を振り食堂を出て行く清香、その背中はどこか楽しそうだ。

午後から清香が、三時過ぎから矢崎課長がKOGO創立記念式典会議出席のため出掛けた。所内は部課長不在で一気にお気楽ムードになる。

私もこの翻訳を打ち込めば、本日の業務は終了だ。この分なら定時で帰れる、とワクワクしていた。
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