迷走女に激辛プロポーズ
だが、在らぬ所に落とし穴はある。私はすっかり忘れていた。佑都ファンクラブの存在を……そして、その中で最もブラックな小金モチヨ一派、三人衆の存在を……。

彼女たちは虎視眈々とチャンスを狙っていたようだ。終業時間十分前。

「大野木さん、ちょっといいかしら?」

声を掛けてきたのは円城寺円子。一派の中で一番の年少者。だが、私より二歳上。

「教えて頂きたいことがあって」

彼女は私を非常階段に連れ出した。そこにはすでに小金モチヨと殿倉姫子の姿があった。

この三人衆、佑都に関して言えば非常にブラックな者たちだが、ファンクラブのトップだけあって美人で頭が良く仕事もできる。遥香の情報では良家のご令嬢らしい。

だから尚更、勘違いするのだろう。『我こそは白鳥佑都に相応しい』と。

「白鳥様とは本気?」「好きなの?」「お付き合いされているの?」

前置きもなく、いきなり三人からの先制パンチ。

「私たち三人、実は白鳥様のお見合い候補だったの」

出た! これで百合子を含め、十人の候補者の四名が判明した。

「中途半端な思いなら、白鳥様を返して下さらない」

嗚呼、本当にもう! ハーッと大きな溜息を吐く。
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