迷走女に激辛プロポーズ
仕方無しに駆け込んだのは、普段は通らないアーケード付きの商店街。
ここ、シャッターを下ろした状態が目立つ寂しい商店街。いわゆるシャッター通りだ。

だが噂では、衰退した商店街ではなく、全国の老舗店や著名店が集結してできたセレブリティ商店街だと、まことしやかに囁かれている。

そして、シャッター奥では、一元さんお断りのビッグビジネスが、密やかに展開されているとか? いないとか?

そう言えば、と注意深く見れば、商店街というのに道幅が広く、店舗前に横付けされた車はどれも高級車だ。

噂は本当かもしれない、と華麗なる密談を想像し、ほくそ笑む。
そして、徐に商店街の奥に目をやり、とりあえず雨が止むまでブラブラしようと歩き始める。

商店街の長さは三百メートルほどだろうか、街道は暖色系のインターロッキングブロックが、美しく敷き詰められている。

どの店のシャッターにも浮世絵のような絵が描かれ、温かでレトロな明かりが店の脇や軒を柔らかく照らしている。

あまりにも幻想的な光景に、一瞬、ここがシャッター通りだということを忘れるほどだ。
< 185 / 249 >

この作品をシェア

pagetop