迷走女に激辛プロポーズ
物珍しさからキョロキョロしながら歩いていると、アッという間にアーケードの切れ目に辿り着く。

視界が広がり、目前に空が現れる。通り雨だったようだ。雨は小降りになっていた。

空を見ながら、濡れた服が気持ち悪いし、今日はこのまま帰ろうと踵を返し、街道を折り返そうと数歩歩みを進め、足がピタリと止まる。

少し先のシャッターから、見覚えのある顔が出てきたからだ。

「佑都？」

彼の後に続き、髪の長いスレンダーな美女が出てきた。とっさに身を隠す。

話は聞こえないが、とても親しそうだ。女性の美しい笑みに、佑都が答えるように微笑む。
その姿は衝撃的だった。私以外の女性の前で、佑都があの蕩けそうな笑を浮かべたからだ。

ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
今日は榊部長と会議で出掛けていたのでは？　瞬時に浮かぶ疑惑。

佑都が助手席のドアを開け、彼女をエスコートする。
女性の車だろうか、初めて見る車だ。

そこで私の息が止まった。
女性が助手席に乗り込む寸前、佑都にキスしたのだ。
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