迷走女に激辛プロポーズ
両親と兄修一を前に、佑都と私はソファーに並んで座る。

「で、気持ちを聞こうか」

兄の容赦無い声が早々に迫る。
今日も静穏な姿は成りを潜め、威圧的な態度全開だ。

「安心して下さい。楓も俺のことを好きだと認めました」

だが、佑都は怯みもせず、照れもせず、ハッキリ言い切り、私の肩を抱く。そして、「なっ」と確認を取るように、柔らかな瞳で私を見る。

それが照れ臭く、目を逸らし、小さく頷く。

「おお、そうか!」
「まぁ、ひと安心だわ!」

ホッとする両親に続き、兄が口を開く。

「では、予定通り婚約式は来週土曜日二十二日だな」

予定通り? 二十二日? また、勝手に事が進んでいたのか!
ピキピキと米神にシャープマークが浮かぶ。

「はい……ですが、諸事情で婚約指輪が間に合いませんでした。すみません」

兄の眼がギラリと光る。
こういう時、兄は野獣のように勘が働く。何かピンときたらしい。

「ホホォ、その事情とやら、聞かせてもらおうか」

嗚呼、終わった……。
容赦無い鋭い眼差しが、佑都と私を追い詰める。
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