迷走女に激辛プロポーズ
結局、取り調べを受ける犯人のように、「オラオラ、吐かんか!」と攻め立てられ、口を割る。

結果、兄はマグマを大噴火させ、同居はおろか婚約も結婚も「許さん!」と言い出した。

「俺は前件で、女性関係がだらしない奴に絶対妹はやらんと決めた」

亡き婚約者の愛人たちに、未だショックを受けているようだ。

「お前にその気が無くても、元カノと会いキスまでされたことは事実だ。一人残され、お前たちを見送ったコイツの気持ちを思うと……俺はお前を許すことはできん」

もしこれが時代劇なら、「そこへ直れ、叩き切ってやる」ぐらいご立腹だ。
氷点下の眼が佑都を睨む。そこへ、珍しく父が口を挟む。

「もしかしたら……彼女は楓に気付いていたのかもしれない。女性の思いが、焼け木杭に何とやら、ぐらいならまだ良いが……」

父は何が言いたいのだろう……?

だが、常に人の上に立ち、滅多なことで感情を表に出さない父だ、その顔から何も読み取れない。

「ファミリーという隠れ蓑を付け、佑都君側を自由に動ける女性……思い過ごしなら良い。だが、この先何を仕掛けてくるか分からない。君はそういう立場に在る人間だ。親として、何より楓が傷付くのは許し難い」

仕掛ける? 立場? 父は何を言っているのだろう。
キスのことだけではないのか……。

「楓は置いて帰れ!」

止めはやっぱり兄だった。

佑都は黙って兄と父の話しを聞いていたが、途中、父の言葉にハッと何か思い当たったようだ。ジッと考え込み、そして、深々と頭を下げる。
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