迷走女に激辛プロポーズ
「すみませんでした……ああ、クソッ! お義父さんと先輩のおっしゃる通りです。気が緩んでいたようです。至急、調査した上、親族会議を開き、場合によっては彼女をファミリーから除名します」

私は慌てた。そんなことは望んでいない。ファミリーと言っても、ビジネスが付くくらいだ、仕事がかかわっていることぐらい分かる。そこに私情を持ち込むなど言語道断だ。

「そこまで大袈裟にしなくても……」
「楓、お前は黙っていろ!」

兄は大きく頭を振り、私の言葉をキツク制す。

「ああ、小さな綻びはやがて大事になる。早々、解決してもらおう。解決するまで楓はこちらで預かる」

佑都は、それは……という顔をしたが、有無も言わさぬ兄の態度に、渋々頷き一人帰って行った。

車に乗り込む間際、彼は私を強く抱き締め「すぐ迎えに来る」と言って走り去った。

あまりの展開に気持ちが付いていかない。荒野に一人置いてきぼりされたような気分だ。

走り去る車を見送り、トボトボ家に入りかけ、足を止める。
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