迷走女に激辛プロポーズ
「本当、イイ女。幕が上がったのかしら? 主人公が動き出し、共演者も慌て出したみたい」

フワッと笑う清香。その笑みは今まで見たことも無い自然な笑みだった。
彼女……何もかも知っている? 何故?
不審気に清香を見る。だが、彼女は素知らぬ顔で遥香に声を掛ける。

「あぁ、そうだわ。遥香ちゃん、告白のベストタイミング、近々あるかも」

綺麗なウインクを一つすると、清香はハンバーグを口に入れる。いつも以上に美味しそうに……。

遥香が素早く立ち上がる。

「パフェ奢ります。そのタイミング、絶対教えて下さい」

そして、アッという間に券売機へと飛んで行った。
娘よ……本当、平和で何よりだ。



あれから幾日過ぎたろう。
白鳥課長はまだ会社に出て来ない……嗚呼、彼が恋しい。
しかし、恋しいのは佑都ではない。あくまで白鳥課長だ!

疲れた……。今日は一体何曜日だ……月、火、水……木。

どの組織もだが、誰それが居ないから仕事が回らない、ということは有ってはならない。しかし、往々にしてよくある話だ。そして、困るのがその仕事に携わる者だ。

海外事業部は黒仏こと、榊部長の指揮が抜群なのと、各課長の手腕が優秀なのとで、急に佑都が留守だといって業務に何ら支障は無い。

支障はないが……今回、先とは違う理由で……支障だらけだ!
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