迷走女に激辛プロポーズ
両腕を清香と遥香にガッツリ絡められ、パーティーが始まる二十分前に会場入りする。そこには既にHAPPY(?)を纏った男女が溢れ返っていた。

よくまぁ、昨日に今日でこれだけ準備ができるものだ。

パーティーの度、お題のように出されるドレスコードは帝社長とその一派が考えているらしい。

回を重ねるごとに、謎かけみたいになっている。
いったい社長は何を目指しているのだろう? 疑問だ。

だが、流石、帝の社員。毎回、期待を裏切ること無く、自分なりに表現してくる。
やはり帝には、優秀な変人……もとい、人材が集まっている……と思う。

遥香も心配には及ばなかった。背中に小さなエンジェルの羽が付いた、ミニ丈の白いフワフワワンピース姿で、彼女の雰囲気にピッタリ合ったハッピーを表現していた。

清香は、本人が言ったように、HAPPY柄のロングドレス姿だが、想像していたものではなく、深紅のドレスに散りばめられたHAPPYは不思議とお洒落に見えた。

「じゃあ、私はちょっと行ってくるわ」

役職故の仕事が有るらしい。着いた早々、清香はスタッフルームに向かう。

「楓様、カナッペとか、どうです? 私取ってきます」

遥香は早速、軽食の乗ったテーブルに向かう。
私はウエルカムドリンクを手に、会場の隅から辺りを見回す。

どの顔も一様に楽しそうで幸せそうだ。
フッと笑みが零れる。案外、社長もこの顔が見たかったのかも……。
< 219 / 249 >

この作品をシェア

pagetop