迷走女に激辛プロポーズ
怖いよう! 真っ青な顔で、息を詰め、瞳を見開いていると、凛と響く佑都の声が呪縛を説く。

「竜崎課長! 止めて頂けませんか」

清香の手を払い除ける佑都の顔は明らかに怒。
ウッ、こっちも怖い。

佑都は固まって動けない私の頭を片手で抱き、優しく引き寄せ、自分の胸に押し付けると、声高らかに宣言する。

「この子は私のです! 故に手出し無用です」

ヘッ?
突然投下された爆弾に、シーンと静まり、唖然と固まる海外事業部一同。

佑都、貴方はメドゥーサの親玉だったのか!

彼の胸に身を預けたまま、ムンクの叫び状態の私。
清香だけはフーンと思惑有り気に私を見る。

「私が狙ってた獲物なのに……じゃあいいわ。別バージョンから攻めることにするから」

不敵な笑みを浮かべ、ランウェイを歩くモデルのように自席に戻る。
清香が着席した途端、我に返った海外事業部一同。

「ギャァァァ」と奇声が轟き、卒倒者続出。所内は大騒ぎになった。

もしかしたらだが、今この場に榊部長と矢崎課長がいなかったのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。

そこにタイミング良くお昼を知らせるチャイムが鳴る。
私は脱兎の如く佑都を廊下に連れ出す。
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