迷走女に激辛プロポーズ
乙女心をくすぐる……と、そこで我に返る。

「ちょっ、ちょっと、何これ!」

慌てて振り解こうとするが、より強く握られる。

「放してよ! 噂広げてどうするのよ!」
「諦めろ。既に広まっている。もう公開恋愛でいいんじゃない?」

何をほざく。何が公開恋愛だ! 芸能人じゃあるまいし!
怒りに打ち震え、殴りそうになり、すれ違う人たちの視線に気付く。

居た堪れない。顔を隠すように下を向く。
ちょっぴり泣きたくなった。いったい何の罰ゲームだ……。

社員食堂は最上階の一つ下、十五階にある。

ちなみに最上階は社長を初めとする重役フロアだ。この階へは専用エレベーターでなければ行けない。

社食は冬期休暇以外、基本年中無休。その上、ランチはもとよりモーニングもやっている。

これは勤務体制故だ。我が社は部課ごとに、基本の九時六時土日休日制かフレックスタイム変形休日制のどちらかを選択できる。よって全社員平等になるよう、社食も現システムとなった。
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