迷走女に激辛プロポーズ
小さく黒い復讐を胸に、引きずられるように食堂に入ると八百席ある椅子はほぼ満席に近い状態だった。その視線が一斉にこちらを見る。ウワッと私は佑都の背に隠れる。

「今日の気分はガッツリ、カツ丼定食だ。楓は?」

人間の感情は、その時の気分に左右される。
今日は奴の豪胆な態度が、無性に腹立たしい!

すっかり食欲を無くし「いらない」と言いかけ、ハードな午後を思い出し、大好物の「トロトロオムライス」とポツリ答える。

「了解、お前の大好きなプリンも付けてやる」

佑都は手を繋いだまま、七機並ぶ券売機のひとつに並ぶ。
もう、振り解く気力すら無い。

「なるほど!」

そこに突然声を掛けられる。

「降って沸いた電撃スキャンダルは本当だったのですね」

ビクビクしながらソッと肩越しに後ろを見ると……。
出た! 帝のパパラッチ遥香。

そう、社内情報に精通した遥香は、今では『帝のパパラッチ』と皆から呼ばれ、何故か生き字引のように扱われる存在となっていた。

彼女の瞳がワクワクと光り輝いている。それがまるで、話を聞くまで逃がしませんからね、と言っているようで、思わず逃げ腰になる。
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