迷走女に激辛プロポーズ
「何だそのリアクション! 突然男の家で目覚めたら、普通なら慌てふためくだろ。その慣れてます的な落ち着き、妙に腹立たしい!」

ペチッと新しい冷却シートを、また乱暴に……張り付ける。

寝起きの回らない頭に、良く分からない理由で、一方的に怒られる私の方が腹立たしいが、一応言い訳をしてみる。

「――男って言われても、佑都の家だし、こういう経験は……初めてだし、普通のリアクションって……よく分からないし……」

しどろもどろに言い終わると、佑都はハーッと脱力したような溜息を吐く。

「そうだな、悪かった。ネンネのお前を責めた俺がバカだった」

「ヨシヨシ」「ごめん、ごめん」と頭を撫でる。
ネンネという言葉は微妙だが、どうやら佑都に勝利したらしい。地味に嬉しい。

「喉乾いただろう。水飲むか」

頷くと佑都はベッドサイドに腰を下ろし、グラスに水を注ぐ。
そして、私を抱き起すと片腕で胸に抱いたまま、私の唇にグラスを付ける。

ゆっくり傾くグラス。流れ込む水。ゴクッゴクッと喉が鳴る。

水が喉元を過ぎる度、乾いた体細胞がもっとと欲しがる。欲求を満そうと私は夢中で喉を鳴らす。そして、気付けば飲み干していた。
< 47 / 249 >

この作品をシェア

pagetop