迷走女に激辛プロポーズ
せっかくだからと、シャネル仕様のバスバブル剤をお湯に投入し、ゆったり入浴タイムを楽しむ。

時間が長かったからか、佑都が一度だけ「大丈夫か?」と声を掛けたが、「大丈夫」と答えると、安心したのかそれ以上何も言ってこなかった。

シャネルの香りを身に纏い、全身ピカピカになり、すっかり満足して浴室から出ると、バスタオルの横に紙袋が置いてあった。

それをチラリと横目に、フカフカタオルを巻き付け、まず、髪を乾かす。

背中までの髪を肩の少し下で切ったのは、家を出た頃。それ以来、ずっとこの長さだ。普段は仕事の邪魔にならないように、適当にまとめバレッタで止めている。

アメニティグッズに入っていた櫛で髪を梳きながら、先程の紙袋に目をやる。
何だろ? 櫛を片付け、紙袋を手に取り、中を覗く。

そして、取り出したるは……女物の下着。男性宅になぜこのようなものが有るのかという疑問は横に置く。一応、理解できる。着替えの下着だ。

次に取り出したるは……パジャマ? 否、着ぐるみ? こちらの疑問は横に置きたく無い。追求したい! なぜ着ぐるみ? その上、なぜ牛?

腕を組み、天を仰ぐ。
これに着替えろというのか?

そこでフト思い出す。そう言えば、脱いだ衣類は何処へ?
確か、そこの隅っこに置いたはずだが……無い。

まさか! 慌てて新しい下着と着ぐるみパジャマを着て、バスルームを飛び出す。
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