迷走女に激辛プロポーズ
リビングにいた佑都が、間抜けなほど唖然と私を見る。

「――牛子……だ。恐いくらいに……可愛い」

褒められたようだが、そんなことに構っちゃいられない。

「ちょっと! 私の下着どうしたの!」
「ああ、洗濯機に放り込んだぞ、牛子」
「ああって、触ったの、私の下着に!」

「イーヤァァァ!」と悲鳴を上げながらムンクの叫び顔になる。

「貴様、変態かぁ! 成敗してやる、そこへ直れ!」

羞恥心と怒りでパニックに陥った私は、闇雲に手と足を振り回す。だが、悔しいことに、佑都はそれをヒョイヒョイ、とマタドール並みに交わす。

――何気に物凄くムカつく!

「どうどう。落ち着け、牛子」

そして、とうとう背後からガッツリ捉えられ、身動きができなくなる。

これは見方を変えれば、婦女子憧れキュン死続出、バック・ハグ……と言えなくも無い。しかし、今の私にはイ・チ・ミ・リの萌え要素も無い!

「何を怒っているのだ? 昨日もその前のも洗濯したぞ。結婚したらお互いの下着ぐらい洗濯し合うだろ。予行演習だと思え、牛子」

牛子、牛子と連呼するな! で、既に二枚も!
握り拳をブルブル震わせ唇を噛む。そして、爆発する。

「あんたにはデリカシーっていうものが無いのか! 付き合って間も無い女の下着に手を掛けるとは、お主は死刑だ!」

わめく私を背後から抱いたまま、佑都は頬と頬をくっ付ける。

「赤くなったり青くなったり、牛子、本当、可愛いな」

そして、スリスリする。
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