迷走女に激辛プロポーズ
私が倒れた日、竜崎課長と遥香は会社に置いたままの荷物と、下着など身の回りの物を買って持ってきてくれたそうだ。その一つが牛子パジャマらしい。

彼女たちの意図がどこにあるのか全く分からないが、佑都はこのパジャマがいたくお気に召したようだ。いつになく上機嫌の佑都に毒気を抜かれ、大きな溜息を付き呟く。

「お腹が空いた」

「了解。おいで」とまた手を引かれリビングを出る。

今度はリビングを背に、右手窓越しにライトアップされた中庭を見ながら十歩ほど行く。

「ここがダイニング」

六人掛けのテーブル奥にアイランド型のキッチンが見える。
ここも家具が少なくスッキリ片付いている。

そして、また気付いた。この家の家具は、全てヨーロッパの高級アンティークだと。
このテーブル、家具マニアの母親が欲しがっていた物の一つだ。かなり値が張る代物だったように記憶する。

テーブルにはイエローとオレンジのランチョンマットが横並びに敷かれ、その上に、ウォーターグラスとカトラリーが並んでいた。多分、このグラスはバカラで、カトラリーはクリストフル。

「オレンジの方に座っていろ」

既に食事の用意が調っているということ?
素直に腰を下ろすと、佑都はワンプレートの大皿をランチョンマットの上に置く。
< 58 / 249 >

この作品をシェア

pagetop