迷走女に激辛プロポーズ
「質問返しするな! 小首を傾げるな! 食べ差しを食うな!」

ガルルルと吠えんばかりに睨み付ける。

「まあまあ、落ち着け。綺麗な顔が台無しだ」

コヤツのこういうシレッとした『何でも分かっています』的な態度が、時々、私をイラつかせる。

「まあ聞け。俺が結婚しない理由はお前も知っての通りだ。一族一同、皆も知っている」

一族一同? 皆って誰それ?

佑都との付き合いは、足掛け五年になる。
今、気付いた。コヤツのこと何も知らない。

知っているのは……会社の誰もが知っている基本情報と酒と食べ物の好み、そして、最愛の女性のことだけだ。

それでも何ら支障なかった。私たちの間柄は同期で飯友だから……。
でも、今、なぜかモヤッとした。

佑都はミネラルウォーターで口を潤すと話しを続ける。

「一族一同、見守っていればそのうちどうにかなる、と思っていたらしい」

非常に楽観的と言おうか、いい加減と言おうか、しかし、よく考えたらコヤツの親族、さもあらん。

それにしても、見知らぬ一族一同様、その考えは甘い!

成就せぬまま深く胸に刻んだ異性への想いはダラダラと尾を引く。
その思いを昇華できるのは本人だけ。なのだが……。

そう! これが半端無く難しい。
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