迷走女に激辛プロポーズ
「何をボーッとしているんだ」

突然声を掛けられ、ビックリした私はリモコンをテーブルに落とし、その音に驚き仰け反った。仰け反った先は、トレーを持つ佑都の脛。

「何をやっているんだ? お前、挙動不審過ぎるぞ。まぁ、牛子の姿だから何をやっても可愛いが」

上から覗き込まれ、呆れ笑いされる。

――佑都、良く笑うなぁ。『結婚しないか?』発言の夜から、佑都の態度が随分変わった。

前以上に優しいし……トゲトゲしさが無くなったと言おうか雰囲気が柔らかくなったような気がする。

彼はトレーをテーブルに置き、ケーキと紅茶を私の前に並べる。そして、自分は缶ビールを持ってソファーに腰を下ろす。

「佑都はビール飲むの?」

振り返り尋ねる。

「そう」

缶をプシュと開け、そのまま口を付ける。

「ハーッ、最高!」

手の甲で泡を拭き取る。

「何でビール飲むと、皆、そんな風なテンションで、そう言うんだろうねっ?」
「一日が終わってホッとして、今居る時間が最高にハッピーだからじゃないか?」

「フーン」と返事をし、私はまたテレビの方を見る。

『今居る時間がハッピー』……ハッピーな時間。

テーブルの上のケーキは洋菓子専門店ポルテの有名パティシエが作ったイチゴショート。
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