迷走女に激辛プロポーズ
「しかし、いつまで経っても次のアクションを起こさない。で、とうとう痺れを切らせたようだ」

赤ワインの入ったグラスを揺らし、佑都はフーッと大きく息を吐く。

「現状のまま変化が起こらなかったら、三か月後、俺の誕生日に見合いをさせられる」

一族一同様は強硬手段に打って出たわけだ。
なるほど……何処も同じということだ。

私が家を出たのは三年前、会社に入って二年目のことだ。女を捨て仕事に生きる我が娘の背に、『生涯独身』の四文字を見た母親は、切実に娘の行く末を案じたらしい。

『女性の価値はクリスマスケーキと同じ。二十四歳を過ぎたら下がる一方なのよ』

これをクリスマスケーキ理論というらしい。母は、そんな良く分からない化石のような理論を持ち出し、親族をも巻き込み、見合い攻撃を始めた。

初めこそ真面目に対応していたが、エスカレートする攻撃に、そのうち応戦するのも馬鹿らしくなり、家出同然に家を出た。

この過激な反抗が、どうやら功を奏したらしい、その後攻撃はピタリと止んだ。
そして、渋々だが、独立も認めてくれた。

今思えばだが、この時やっと親離れができたのかもしれない。
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