迷走女に激辛プロポーズ
あまりジロジロ見るのも失礼かと、ドアの方を向いていると突然老紳士が話し掛けてきた。
「お嬢さん、『三つ巴』の三段重、食べたことあるかい?」
突拍子もない質問に、なぜ貴方はそれを聞くのですか、と逆に質問返ししそうになり、グッと言葉を飲む。
それは、相手が誰だか分からないからだ。そして、下手なことを言ってトラブルを起こしたくないからだ。意外に私は小心者だ。だから、真っ当な返事だけ淡々と口にする。
「まだありません」
「そうか、それは残念だ。私はいま食べてきたばかりでね、本当に美味しいよ。君も一度食べてみるといい」
「はい、そうさせて頂きます」
「食は生活の基本、美味しいものは人生を豊かにしてくれる。そうだ! 明日、一緒に食事をしよう」
チンとベルが鳴る。表示板を見れば、八階のランプが点いていた。
「ありがとうございます。では、失礼します」
頭を下げ、エレベーターを降りる。
ドアが締まるのを背中に感じ、五歩行ったところでピタリと足を止める。そして、徐に首を捻る。
明日? 一緒に食事? なぜに?
ウーンと考え、そうだ、と手を打つ。
狐に化かされたんだ、と非現実的な回答を得る。
だが、『それではイマイチ納得できないぞ』とちゃぶ台の私が言う。
うん、そうだなぁ、と思い返し、まぁ、いずれにせよ連絡先も知らない、どこの誰だか分からない人と食事に行くこともなかろう、と現実的な結論を導き出し、ようやく納得するとまた歩き出す。
だが、後にこの結論は浅慮だったと反省する。
「お嬢さん、『三つ巴』の三段重、食べたことあるかい?」
突拍子もない質問に、なぜ貴方はそれを聞くのですか、と逆に質問返ししそうになり、グッと言葉を飲む。
それは、相手が誰だか分からないからだ。そして、下手なことを言ってトラブルを起こしたくないからだ。意外に私は小心者だ。だから、真っ当な返事だけ淡々と口にする。
「まだありません」
「そうか、それは残念だ。私はいま食べてきたばかりでね、本当に美味しいよ。君も一度食べてみるといい」
「はい、そうさせて頂きます」
「食は生活の基本、美味しいものは人生を豊かにしてくれる。そうだ! 明日、一緒に食事をしよう」
チンとベルが鳴る。表示板を見れば、八階のランプが点いていた。
「ありがとうございます。では、失礼します」
頭を下げ、エレベーターを降りる。
ドアが締まるのを背中に感じ、五歩行ったところでピタリと足を止める。そして、徐に首を捻る。
明日? 一緒に食事? なぜに?
ウーンと考え、そうだ、と手を打つ。
狐に化かされたんだ、と非現実的な回答を得る。
だが、『それではイマイチ納得できないぞ』とちゃぶ台の私が言う。
うん、そうだなぁ、と思い返し、まぁ、いずれにせよ連絡先も知らない、どこの誰だか分からない人と食事に行くこともなかろう、と現実的な結論を導き出し、ようやく納得するとまた歩き出す。
だが、後にこの結論は浅慮だったと反省する。