迷走女に激辛プロポーズ
その心の怒りが顔に現れていたようだ。
「そう膨れるな」
いつものように、彼の大きな手が私の頭を静かに撫でる。
温かい……。
彼の手は魔法の手だ。
彼が触れると荒波立った心が……たちまち凪ぐ。
猫のように目を細め、フン、この手に免じて許してやるか……と思っていると、カウンター越しに大振りの白いココット皿が現れる。
「失礼致します。夏野菜と鶏肉のアヒージョ、バケット添えでございます」
古舘氏が私の前に、湯気を上げ、鼻をくすぐるそれを置く。
ん? 佑都が頼んだのかと彼の顔を見るが、奴は、違う、と首を振る。
「冨波様から大野木様へ、とのことです」
古舘氏の視線を辿ると、常連仲間の冨波圭吾が四人の可愛い女性に囲まれ、ボックス席からこちらを見ていた。
途端にムッとする佑都。私はお礼の意味で軽く頭を下げる。すると圭吾から投げキッスが返される。
「奴のことは無視しておけ!」
佑都は圭吾に向かって、中指を立てる。
オイオイ、それ、してはいけないジェスチャーだぞ!
二人はいつもこうだ。以前からの顔見知りのようだが、どう見ても犬猿の仲だ。
特に、私におチャラケたような態度で接する圭吾には、佑都は烈火の怒りを現す。
「そう膨れるな」
いつものように、彼の大きな手が私の頭を静かに撫でる。
温かい……。
彼の手は魔法の手だ。
彼が触れると荒波立った心が……たちまち凪ぐ。
猫のように目を細め、フン、この手に免じて許してやるか……と思っていると、カウンター越しに大振りの白いココット皿が現れる。
「失礼致します。夏野菜と鶏肉のアヒージョ、バケット添えでございます」
古舘氏が私の前に、湯気を上げ、鼻をくすぐるそれを置く。
ん? 佑都が頼んだのかと彼の顔を見るが、奴は、違う、と首を振る。
「冨波様から大野木様へ、とのことです」
古舘氏の視線を辿ると、常連仲間の冨波圭吾が四人の可愛い女性に囲まれ、ボックス席からこちらを見ていた。
途端にムッとする佑都。私はお礼の意味で軽く頭を下げる。すると圭吾から投げキッスが返される。
「奴のことは無視しておけ!」
佑都は圭吾に向かって、中指を立てる。
オイオイ、それ、してはいけないジェスチャーだぞ!
二人はいつもこうだ。以前からの顔見知りのようだが、どう見ても犬猿の仲だ。
特に、私におチャラケたような態度で接する圭吾には、佑都は烈火の怒りを現す。