迷走女に激辛プロポーズ
「僕は知っていたんだよ。彼女が僕を好きだってことを。だから僕とはキスできるって聞いたら、頬を染め頷いてくれたんだ。本当に可愛かったなぁ」

イーサンが懐かしそうに遠くを見る。

「僕も彼女が好きだったし、だったら奪うしかないだろ?」
「それでも凄い決断でしたね」

いいや、とイーサンが首を横に振る。

「なんてことはない。彼女を失うくらいなら」

この言葉に私は平伏したくなった。
イーサン、あんた男だねぇ、といきなり江戸っ子口調になる。

「知人が言っていました。結婚相手を考える時、その人とキスできるか想像するって。そして、できないと思う人との結婚は有り得ないって。雪乃さんはイーサンがすっごく好きだったのですね」

「ああ、彼女自身、私を大好きといつも言っていた」

若かりし二人を想像すると、胸がキュンキュンする。きっと素敵な夫婦だったのだろうな……と。



「あぁ~、美味しかった! 楽しかった!」

自室に戻っても、興奮冷めやらぬ私は、何度も同じ言葉を繰り返す。
イーサンとは、近々また会うことを約束して別れたが、次の機会が待ち遠しい。

そう言えば……フト疑問が湧く。
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