迷走女に激辛プロポーズ
どうしてイーサンは社食で“三つ巴”の三段重を食べていたのだろう? それに、エレベーターの中で会った時、私のことを知っていたのは確かだ。なぜ?

昨日と同じように冷蔵庫の中身を確認し、朝食のメニューを考えながら首を捻る。

そこに、「暑ちぃ」と言いながら佑都登場。

お風呂上りの彼からシャンプーのいい香りがする。また、髪にタオルだ。自力で乾かす気がないのか?

「ビール飲む?」
「ああ、もらう」

冷蔵庫から取り出し差し出す。なのになぜか佑都は受け取らない。

「ん? どうしたの?」

向かい合い、黙ったままの佑都を見る。シャープな顎から水滴が落ちそうだ。手を伸ばしタオルの端を掴むとソッとそれを拭う。

「髪乾かして欲しいの?」
「イヤ、違う」

タオルを握る私の手に佑都の手が重なる。
「なあ」とそのままの姿勢で佑都が訊ねる。

「さっき話していただろ。結婚相手を考える時、その人とキスできるか想像して、できない奴とは結婚できないって」

ん? そう言えばイーサンにそんな話をしたな、と思い出す。

「ああ、うん。それがどうかした?」
「ん、じゃあ……楓は俺とキスできる?」
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